BLを読み解きたい

なんでこんなに好きなのか考えたいだけ

小木くんの夏休み 感想

 

 

"分からないから真也なの?"

 

小木くんが女性ものの洋服やメイクをしてることを田子くんは知らない。なぜなら田子くんは目が見えない。田子くんと2人きりで会う時はスカートのようなものを履いていく。それは小木くんのしたい格好だから。そしてそれは田子くんには見えないから。

このことを指摘した田子くん兄のひとこと。

 

 

アンリミでなんの気なしに読み始めたら、ものすごくよくて、急いで2巻目を買ったよー。まだ2人の物語は続いてるから完結してません。

 

 

ブログ冒頭に書いたやりとりで小木くんは考える。

田子くんが目がみえないから好きになったわけでもない。

目が見えない人の前なら好きな格好ができる、それを楽しんでいたのは事実だけれども、そのために付き合っているんじゃない、そう誤解されたくない。

 

ここの心情が分かるようで、分からないようで、分かる。ようで分からない。

 

お通夜に行くことになって、小木くんは伸ばしていた髪の毛(きっと小木くんは気に入っていたと思う)を男の子のようにバッサリ切る。

女の子風味のお洋服、ネイル用品なんかの小物、捨てちゃうの。

 

すごく短く切った髪の毛で、喪服を着て、友達にどうした?って聞かれて泣くのね。

なんか私も立つ場所がぐらぐら揺れてるような何とも心許ない気分になっちゃった。

 

誰に責められたわけでもなく、もちろん小木くんの好きな田子くんだって、小木くんの格好を肯定してた。

母親も小木くんに寄り添ってる。田子くん兄もただ悪意なく質問しただけ。

 

小木くんが変わろうとしてるだけやねん。

ただ何に変わろうとしてるんやろう?何者になろうとしてるのかがよく分からない。誰のために、何のために。

 

田子くんは、小木くんが髪の毛を切っても、思いっきりメンズのお洋服でも気が付かない。見えないから。

 

 

全盲の人と関わることが中々ない人がほとんどやと思う。家族や友人にいたのなら別やけど。

 

だからこの御本でもなるほどと思うことがたくさんあったし、(例えばAVを観たいけれども体位が分からないとか。知らない道を音声案内で歩くとか。)

 

田子くんは飄々として何でも結構口にだす。田子くんの元々の性格もあるのだろうけども、口にだしてしっかり言わないと、言ってもらわないと分からないよね。見えないんだから。顔色を伺うなんてことはできない。

目を瞑ってみると真っ暗で本当に怖い。数年前、台風で停電になって、お昼の間は、ゆーて、家やねんからどこに何あるか分かってるし電気なくてもヨユーやし。って言ってたものの、夜になって真っ暗になって何も見えなくて全くなにもできないから不貞寝した。

 

目の見えない猫を飼ってるんだけど、その子にだいぶと目の見えないということを教えてもらった気がする。家の全ての構造を覚えていて、玄関付近は怖いところと認識していて、階段を登るときは走っても、降りるときは一段一段慎重に、壁に身体を這わせながら降りていく。

私が通り道にうっかりビールのケースを置いてしまったりしてたら激突してる。

 

あ、また脱線。

 

 

 

 

小木くんが、初めて友達を好きだと認識した思い出エピソードから、あぁそうか。

 

いくら好きであっても、制服は学ランを着なくちゃならない。

好きな人は女の子と付き合う。

 

好きが大きければ大きいほど伴う苦しみも増大するから、好きを大きくし過ぎないように慎重に生きてきたんだ、小木くん。

小木くんの好きなこと、好きなもの、人生でだんだん自覚していくよりずっっっとずっっっと前から世の中の理みたいなものが先に出来てしまってて、そんなの誰だって戸惑うよ。

 

 

田子くんのことも純粋に好きなんだけれども、周りから、目が見えない人相手に好きな格好をしているという雑念が嫌やったんかな。それは好きなものを捨てるくらいの気持ちやったんやな。

 

田子くんはすごいよな。

安易に、小木くん好きな格好したらええよー。とは言わないんやもんな。

そう見えるのが嫌なら、目の見えない自分の方が小木くんを好きなように他人から見えたらいいやん。という解決法はなんて澄んだ愛情なんやろうね。

 

いわゆる"他人の目"なんてものは田子くんには文字通り見えない。

だから大声ではっきり言うんだ。好きだって。(ちょっと照れながらも!)

 

 

さっぱりきっぱりでしっかり男子高校生な田子くんと

余計なことまでつい考えすぎちゃう小木くん、続編も楽しみ。大好きな物語や。

 

 

 

 

 

 

田子くんが真っ暗な部屋で楽しそうに音楽を聴いていて、小木くんが、これが田子くんの世界かとハッとするシーンあるねんね。

私も、自分の猫をみていて、何も見えない世界はどれほど退屈なんだろうと不憫に思ったりもしてたんやけど、家の中で1番日の当たる場所を見つけてのんびりしたり、ちょっと置いといただけのビニール袋を見つけておもちゃにしたり毎日存分に楽しそう。

さぞかし退屈やろうと、あれこれぴーちくぱーちく話かけているけどもうるさそうにしてる。

 

仕様のないことを嘆くより楽しいことのほうがずっと楽しい。