"俺は
もう少しだけ
彼に近付きたくて
自分を磨いて
前に進むことにした"
私はこの物語が大好きだ。
この物語に奇跡は起きない。
突然スーパーパワーを持ったり、スパダリ登場で問題解決したり、先祖のあれで刀の色が変わったり、メガネ外したらイケメンだったり、六眼の使い手だったり、そんなことは何も起きない。
ただ、花丸さんが、恋をしたんだ。人生で最大級の恋をしたの。
いつもフローズンを買うコンビニで。
私がこの物語が好きなところはたくさんあるんだけど1番好きなのは物語の最初と最後で何も変わってないところ。(いや、むちゃくちゃ変わってはいるんやけど)
花丸さんはずっと同じ会社でずっと同じ仕事をしている。それだけやねんな。
1巻の始めでは自信なく背中を丸め、会社の人と関わらず、ゴミ溜めの家でごろごろと休日を過ごす。
もしかするとずっとこんな生活で人生を終えたかもしれない。
コンビニで出会った戸塚くんに恋をして、髪型を変える、背筋を伸ばす、仕事でほんのちょっと積極的になってみる。
みるみるうちにお部屋がキレイになって最終巻ではもう引越しまでしちゃってどこのモデルルームやねん?ってくらい物の無い素敵な部屋になってる!うれしいんだ!すごく。
1つの物事をプラスに作用するかマイナスに作用するかは心の持ちようだと常々思うんだ。
何につけても文句を言おうと思えば出来るし、感謝しようとするなら出来る。仕事や同僚や社会や家族や恋人やあれやこれや。
花丸さんは状況が何一つ変わってない中で、自分の意識ひとつだけで外見や仕事での立ち位置を変えていった。そこがいいし、花丸さんの会社の人達も公平に花丸さんを評価していて本当にいいなと思う。
まりあさん、いいよね。
まりあさんが戸塚くんの彼女だと勘違いするところ
花丸さんがまりあさんに実は戸塚くんが好きな事を告白するところ
ここなんかもう涙なしには到底見れないよ。
そして、この作品の好きなところは、
戸塚くんに現状彼女がいることについて、花丸さんの恋を応援できないという同僚の批判はあっても、同性が好きだということについてのハードルについては誰も何も言わない。というか特に気にも留めてない。
(不倫や浮気がイケナイことだと社会通念上ではそうだとしても近しい人がそれを押し通すのなら私は批判しない。だって知らない人よりも自分の近しい人の人生を応援する。私は倫理観より優先したいものがある)
男同士なんて、とか、未来がない、とかなんとかで当事者が傷付く描写を物語のスパイスとして利用するのはもうナンセンスやと思う。(他作品で楽しんでしまってるのやけども)
まりあさんがあまりの花丸さんの実直すぎる恋心に涙したように私も涙しちゃう。
戸塚くんがアメリカに行っちゃう前に告白したシーンも本当よかったなあ。そしてそれは安易に上手くはいかない感じも。それでも花丸さんは後ろを向かないことも。
戸塚くんの彼女である近藤さん。
彼女の存在もすごくいい。
通常、わたしはボーイのラブに絡んでくる女キャラは末代まで憎むくらいの勢いで全員大嫌いなんですが、なんか近藤さんは憎めない。
なんやろう?花丸さんにそういう感じで惹かれてしまうのはそりゃ仕方のないことですね。って妙に納得してしまうからなのかも。
このお話はこの上なくハッピーエンドで完結し、私は心から祝福する。この物語の全てのキャラの勇気がいったであろう一歩を讃えたい。
退屈の中で
コンビニでたまたま会話して、
恋をして、
それはもうものすごく恋をして、
自分を立て直して、
少し着飾って、
なかなか思うようにいかなくても、
恋した相手を一心に思って、
日々を少し気合いを入れて過ごして、
そうして、
デートでキスをして、
きっと今日も一緒に眠るんやろう。
ただそれだけの話。
見守ったみんなが幸せになる、ただそれだけの話。