私は何度も何度も主張している通り
菊池を宇宙一愛してる。
その上で、この物語は究極のバッドエンドだと捉えてる。
こんなにのめり込む物語は稀だし
私の感情移入も半端ないし、その物語の疾走感と熱量と厚みが最終回まで全く変わらず、それどころかさらに深みを増して私の脳内を支配して夢中にさせる。
私には基本こういう終わり方が好き、とか嫌い、とかこうなってほしいとかそういうのないんです。
作者の赴くままを受け入れるだけ。
ただ、物語というのは、作者が一旦外に放出してしまったら、物語自体が力を持ち、各読み手によって、いくらでも魂の形を変え、長ければ何百年と生き続ける。
だから、この感想は私が旅した私のよこいぬの感想だということをご理解ください。
この物語は究極のバッドエンド。
私は菊池を宇宙一愛してるからハッピーエンドなんじゃねーの?バカなの?斜に構えてんじゃねーよ。とお思いの事かと存じます。
これよりクソ長文で手前勝手な事を言いまくります。
なんせ菊池白痴な私だし。
うざーって方はそっと瞳を閉じて。
私の愛した菊池は確かに死んだ。
He is gone.
新谷さんの実家で朝日を浴びながら新谷さんと電話してる時、あの時、私の愛した菊池は死んだの。
金髪の犬は
黒髪に切り揃えられ、あまりの変貌ぶりに、
お宅だれなんや?
ってページを戻っては見て、戻っては見てを繰り返した。
あれは、黒髪のかわいい男の子は菊池じゃない、
春馬くんや。
凡庸な春馬くん。
まさにそうなの。凡庸。
「凡庸」を菊池が手に入れるには、どれだけの血の滲むような努力が必要だったのだろう。
そして、須藤さんが咽喉から血が出るほど欲しかった「凡庸」
男子3日会わざれば活目して見よ
これを菊池から教えられるとは。
活目してたのに!瞬きすらしてないのに!
どこいったの?菊池?いつの間にかわいい春馬くんになったの?
もう、無駄なロックテイストのファッションしてないし、凡庸な服着てるし、須藤さんに会いにいくときなんか、なに?それ?モンベルみたいなん着てるけど?北海道だからなんか防寒してきたん?そんな事まで考えれるんや?
ドンキの似合うバカなチンピラちゃうやん?
まさかとおもうけど、無印良品とかでシャンプーとかまで揃えてないよね?
菊池は傾国の美しさと幼子と大人の間の危うい表情をたたえた泣き顔とIQ2ぐらいの考えのなさとイキりと新谷さんにすがってすがって新谷さんがひとたび、その手を離したならぐにゃりと倒れる芯のなさとメソメソ泣いてセックスをねだって、ノンケの佐治にさえ、泣き顔そそると言わしめるほどのとんでもない美しさと色気と庇護欲を掻き立て、そして世の中全てから全く大事にされてなく、その美しさをただただ消費されボロボロになって、悪態をついてトラブルをいとも簡単に呼び込み、そして泣きじゃくる。
それこそわたしの愛した、宇宙一愛した、菊池。
ここまで菊池の魅力を存分に消し去るのばら先生に感服する。
危うい傾国の美しさと反社の物語はいつだって早死を意味する。
美しきとは短命。
バナナフィッシュのアッシュとかね。
だから、物語としては菊池は死んでもいいと思えるほど愛した新谷さんと結ばれて、仕事もして幸せでよかった。と思う私もいるの。愛してるからね。
懸命に整備師としての仕事をがんばってる春馬くんはやっぱり愛おしい。
やっぱり宇宙一愛してる。
そして軽はカッコ悪いから、とか
ヒコーキ代くらい稼いでるから、とか
ちょいちょい春馬くんの中に菊池みが顔を出して、いちいち愛してます。ってなるんだけど。
菊池と春馬くん。相反する感情が入り混じり本当苦しい。
菊池は新谷さんのために
真っ当に、凡庸に生きていくために
その暴力的なほどの魅力を、魂を、捨てたんだね。
ちょっと太ってるし。6キロは太ったんじゃないですか?
幸せなんだね。あの戦争捕虜ですか?ってくらいガリガリじゃないんだね。
もう、春馬くんは菊池じゃないから、
髪の毛をつかまれてフェラチオを強要されることもない。その美しい顔が足で踏まれることもない。
誰しもに大切にされるかわいいかわいい健気で仕事もちゃんとがんばる春馬くんになっちゃったのね。
人は変わる。それを成長と呼ぶ。
ここからは須藤さんのことを想って。
新谷さんは須藤さんのことを確かに想ってはいたけど
須藤さんを救うことは出来なかったけど
須藤さんは菊池と違って頭が良い。
その頭の良さを新谷さんは感じ取って、菊池の健気さを思って、結局菊池を選んだんだけど。
須藤さんの哀しきピエロをどう消化したらいいの?
須藤さんは全然自由になってない。
自由になってないどころか
母アヤコの亡霊に囚われ、髪を伸ばして、そうしてガリガリに痩せて、もうアヤコそのものになって北の極寒の地でピエロと化して小学生のドリルをしたりしてる。
きっと黒い痩せたその猫は静かな雪の上で遅かれ早かれ待ち望む死を迎えるんだとおもう。たった一人ぼっちで。
小さいそのつま先は何も頼ることなく雪を空で掴んでヨシツグくんや新谷さんや、もしかしたら上手く生きていけたであろうもう一つの自分を想い死んでいくんやわ。
だって今だって、トムとジェリーみたいなレールの上をなぞるお決まりでピカピカ明るい馬鹿馬鹿しいアニメを見てふわふわとヤクザの愛人を演じ、そうして菊池の、春馬くんの野太い生の炎を見せつけられたんだから。
新谷さんは春馬くんの健気さと須藤さんの手を離してしまった罪悪感を抱いてるし、自分はクソだと自覚してるんやろうけど、
最後結局愛したのは須藤さんじゃないのかな。
菊池のことももちろん大切だし愛してるのだろうけど。
自分にすがりつき、自分の胸をぐしゃぐしゃに濡らした菊池は春馬くんへと変形を遂げ、めちゃくちゃ自分を愛してくれてるのだろうけども、春馬くんはもう一人で立って歩いていける。
愛する人ができたことで菊池は努力をしまくったんだもん。健気で本当マジで愛してる。
須藤さんは初めから一人で立ってる。拙げなその小さい足で、いつだって一人で、凡庸に生きたいと懇願しても運命がそれを許さず、優しくて頭がいいから道化になって、そして、狂おしいほど美しく儚く白い雪の上に血を吐いてトボトボと生きてる。
1巻では
バカでイキりなチンピラ菊池と
スーツを着た大人な須藤さんであったのに。
こんな皮肉があってたまるかいな。
普通の男の子として楽しかったのは、新谷さんとカラオケとか行った日なのかしら?
私、盲目の猫を飼ってるの。
眼球がないから一筋の光も感じない全くの盲目だと思うんだ。
その猫が寝てる時、夢を見てるのか、足がピクピク動いてるときあるんだよね。
どんな夢をみてるんだろう。
せめて夢の中では光があってほしい。
光溢れる自然の中で走り回っているんだろうか?
幸せな景色が広がっていてほしい。
そう願うけど、見たことの無いものは見ることができない。きっと真っ黒な夢を見てるんだろうね。
そう思うとたまらなく辛くなる。
どうか須藤さんは夢を見てほしい。
幸せな景色をたたえた夢をみてほしい。
こうして世界は最も美しい19歳の菊池を失い、
罪悪感と、今一番抱きしめたい人を抱きしめてあげれない虚無の男と、
道化を自らに科して極寒の地で生きる痩せ細った黒猫。
ね、バッドエンド。