"あんな所に素敵なお花!
ワタクシ取ってみせましょう
取れたら幸せ!願掛け 願掛けー"
フォロワーさんが紹介されてて1巻だけ読んで挫折したとおっしゃってて、たくさん本を読まれる方がそんな風に思うなんてどんな話なんだろうって思ったのが1年前でやっと読めた。
紙本しかないからというのが主な理由。
確かに1巻目の勢いが全方位にほとばしってて凄まじい。
わたしは過激派動物愛護だからなるほど犬の描写は飛ばして読んだ。先生ご自身も大変お辛いシーンだったとおっしゃってる(先生は可愛らしいワンちゃんと暮らしてらっしゃるしね)
読みやすいか?人におすすめするか?と問われれば否というしか仕方ない内容ではあるんだけど、読んでしまうと語らずにはいられない、この作品に内包された暴力の行方と理由と意味を吐き出してしまわないと自分が潰されそうになる。
1巻目は太陽。激しいセックス、身を滅ぼさんとする恋、伴う暴力での証明
そして巻末の2人の話。巻末の2人の話は何となく読んでたんだけど大変重要な話なんだね。これから読む人は今大事な話を読んどるねって思いながら読んでほしい。
2巻は蜜月(というても…という蜜月)
3巻は怒涛に全ての秘密が晒される
って感じかな?
3巻を読み終わってもわからない事実はたくさんある。
暴力からの救済をファンタジーであるコイサンというシステムに置き換えているからどこからどこまで現実なのかぼかしてあるからよく分からない。ユリの本名も本当の顔も分からない。いつ死んだのかも分からない。
コイサンを私は受け入れてないんだから(部外者であるから)コイサン外の真実でしか納得できない。
ああ、どうやって感想を書いたらいいんだろう?
このお話は現実にあった凄惨な事件に先生が打ちのめされて、そこからコイサンという着想にいたったとある。
確かにその事件はあまりに酷いから私も初めて知った時には怖くて堪らなかった。(リアルタイムではなかったけれど)
先生のように奪われた魂が神格化してスーパーパワーをもつような被害者の救済に考えは至らず、全くもって被害者に非がないのは言うまでもないけどもそうだということは今日、5分後にも自分がそんな目に合うかもしれないという事実に震えたんだな。心底本当に本当に震えて旦那氏に話して彼は事件を知らなかったからそこから旦那氏は同じように震えて毎日毎日何週間もディナーの話題がその事件のことばかりになったからいい加減その話はやめようと私が言い出した記憶がある。
作品の中で人身売買がでてくるけども、昔読んだ本(闇の子供達)で映画化もされたと思うんやけど、タイの貧しい子供の内臓を自分の子供に移植する話。ノンフィクションやねん。日本人もいるねんで。自分の子が病気なので他の子供の内臓をもらう。
衝撃やったわな。子を想う善良な親の恐ろしい鬼畜の所業。
痛みを耐えて耐えて頑張ったら願いが叶う。コイサン。
登場人物全ての願いは叶ったとみなしていいやんな?
愛されたいと願ったユリ
可哀想なものを救いたい小野(それはそれはこれほどまでの救いっぷりを私はみた事ない。今後もないと思う。)
真の自分を明るい場所で見たがったトミー
ユリを守りたかったツチヤ
あ、小野の妹も。
ユリの受けた苦しみ、その苦しみは想像するなんてことも不可能な苦しみを何をもって救われたとするか、これで救われたと他人が納得することは自己満足が過ぎるから口を閉ざすしかない。
本を閉じてもまだ私の片方の肺がイケダ町の中に置いてきてるようで上手く息が出来ない。
何もしてない。善良な一市民で毎日なんかぷらぷら生きてて、凄惨な事件をニュースで知ると、なんてひどい!と安全圏から怒り時が経てば忘れる。
それら自分の全てを罪に感じてしまう。そんな作品。
醜く目を背けたいけども絶対に目を背けることなど出来ない。アイロンで焼かれた背中に吸い込まれてしまう。