"僕は僕で 君は君だ
僕と同じような見え方をする必要は全くないよ"
私は頗る贅沢大好きの人間なの。
お金のかかってる映画や音楽が大好き。才能の塊で構成されてるオーケストラも好き。
じっくりと時間をかけて新鮮な素材で作られた料理も好き。
まさにこの御本は贅沢。
一切何も不安定要素のない有り余る圧倒的な画力で作り出す骨太な世界。
特殊な設定でありながら、決して読者を置いてきぼりにしない話の作り。
言葉選びと散りばめられたユーモア。
全てが超一級で、1000円未満でこんな贅沢をありがとうございます。(贅沢好きだけど金持ちの訳じゃないしね)
こんなうっとりするほどの贅沢な漫画に度々出会うけど嬉しいなぁ。恋インとかばらとたんぽぽとかMADKとか読む時もあぁ贅沢だなぁとため息がでる。もちろん他にもたくさんある!
デッサンに寸分の狂いもない事が漫画においての最重要だとは思わないけれどもやはりその美しさと精緻に感嘆してしまう。
サイボーグと人間の恋で、セリフも横書きだし、サイボーグの見た目が凝っててサイボーグすぎる(いいの!)し、宇宙の星でテラフォーミングするために滞在してるっていう設定だから読み始めはなんだかこれは難しいぞ。私に分かるかな?って少し不安だったの。
心の話なんだよね。
イーサンは元人間で今は軍用の戦闘サイボーグ。この世界線ではサイボーグと人間の線引きはあるけれどもどちらかに上下があるわけでなくそれぞれに役割があるだけ。
ミハイルは植物の研究をしている人間。
そんな2人が船外活動を一緒に行ううちに恋に落ちるというお話なんだけれども本当によかった。
ミハイルは学者としてフラットな目で全てを見る。
この星の植物は、景色は、自分が目にしているそのものの世界なのか?それとも無機質なのではないか?イーサンにはどう見えるか?
イーサンは眼球を持ってないから同じように見えないと言われれば自分と他人は見え方が違って当然だ。
ここに植物があるのはそうあるべき必然という。
研究者としても人間としても目の前にある事に真摯でそして素直で素敵な人。
イーサンは軍用サイボーグとしてずっと戦場にいた。毎日終わる事なく戦闘していて一体自分はなんのために戦っているのか。
サイボーグを倒してその生命の液体が黒く地面に広がるのをみて虚無になる。
ここなんかずんと重くなったな。戦争って別に個人個人としたら相手のことを殺すほど憎いわけないんだよな。だって知らん人やし。戦争にきてるから軍に入ったから、今、目の前の人を殺す。殺さなければ殺されるし、殺さなければ、戦争に負けたなら、祖国の大事な人がどうなるだろう。でも目の前の、その人にだって大事な人や守りたいものがあるもんね。
末端の今戦ってる人は不毛で哀しいわ。
あ、また話がそれた。ベトナム戦争のこと考えてた。
とにかく2人は両思いになるのね。
ミハイルは人間だからそりゃ裸もセクシーです。愛らしいし。
イーサンは全くサイボーグなのに、なんちゅう色気な事よ。
ほんでな、ミハイルは生身の人間の柔らかさと身体の危うい弱さが存分に分かるし
イーサンの機械の硬さと冷たさが伝わるのにすごーーーーくエロ〜い色気があるんだぁね。そしてお互い大事に想いあってるのがひしひし伝わるなんとも良いセックスなんです!(力説)
サイボーグだからぺろぺろとかも出来ないのに、なぜあんなにえろいのか?
最後の事故のところもその後もとても良い。
心とはどこにあるんだろうね?
字そのものの心臓?脳?イーサンには生身のそれはないけれど確かにある。
ミハイルが腕の1本まで大切に扱ったようにそれは細部に宿り心を構築するんだろうな。
宇宙の果てでも人もサイボーグも愛し合うことが出来るんやもんね。
ほんに、贅沢な読書やったわ。うっとりしちゃう。