"かくれんぼって言ったのに
うそつき!"
"見いつけた!
太郎ちがうよ これは遊戯だ"
小石川先生の御本の中でもとびきり大好きで誇張ではなく50回は読み返してるかもしれない。
好きなところを挙げるとキリがないくらい好きなんだけどせっかくブログだからいちいち言おう。
・たくさんの自然に囲まれているところ
木の実を摘んだり狩をして日々の食事にしていて、それは面倒で時間がかかって大変だけれどもゆっくり時が流れてる。
銀杏をひとつひとつ剥いていくなんてした事ないしこれからする事もないのだけれどそういう時間を眺めるのが大好きなんだ。
冬の到来で雪に閉ざされ2人きりの世界になる。って今まで見聞していただけでイマイチ実感が無かったけれど、ここでの冬は真っ白でふわふわな大きな砦が2人のお家を囲うようで、しーんとしてぴーんとして暖かそう。ウルは冬に発情するんだね。2人きりの何もない世界で発情したならそれを抑える理性は如何ほどやろう。
・ウルの溺愛ぶり
ウルはそれはもう隠すことなく太郎を大切に育て甘やかしている様がこれでもかと描写されていて癒される。
冒頭のセリフも、猟師に命を狙われてたウルが太郎を微塵も悲しませまいとして、太郎のかわいい設定に乗るんだけど何ていう愛情なんだろう。
太郎が声変わりをし始めた時、喉を労ってハチミツ入りの花梨シロップを飲ませてあげる。ここなんだかすごく好きなの。
花梨シロップって何や?花梨ってなに?シロップとかお家で作るの絶対しないけど、丁寧な暮らしの王様だよね。
ケホって小さい咳をした時、ハチミツ入りの花梨シロップをどうぞってされるような事が人生に一度でもあったなら、その人の人生は幸せだと思う。
あとね、好きなエピソードもう一つ。
冬、ウルが窓を開けた時ふわっと雪が舞い込んでウルの尻尾に雪の結晶がついたのね。
それを太郎がちょって待ってって見ようとしてその時
「ルーペ使う?」ってウルが言うの。
ほんの小さな一コマだけど、どんなに小さくてささやかな太郎の言葉をいつも真剣に聞いてるし、すぐ溶ける雪の結晶をわざわざルーペを持ってこようとするのなんて愛が大き過ぎてハッとするシーンですごく好き。
肌が乾燥しないようウルが用意したクリームやオイル。
太郎にぴったりの素敵なお洋服。
太郎のお部屋。
自分を省みず太郎を守るウル。
いつか太郎を手放さなければならないその日を新聞によって見定める。
そして太郎を手放すその日、ウルは絞り出すような声で精一杯太郎を追い出す言葉を吐く。どんなに太郎を大切に想ってるのか知っているからやっぱり何度読んでも泣いちゃうね。
・太郎がかわいい
幼い太郎から少年太郎、思春期太郎、大人太郎まで全太郎かわいいです。
お肉を食べる太郎の口元。ここの描写もすごく好きでジビエはきっと苦手だから食べた事が無いんだけども一度食べてみたくなる。だってめっちゃ美味しそうなんやもん。
太郎がウルを「めっ」って叱るところも好きだなあ。
ウルに顔を撫でられるときの片目を瞑る表情もあどけなくて好き。
猟師とのかくれんぼごっこでウルにウソをつく太郎も好き。
・タヌキの小太と佐助がかわいい
言葉を話さない2匹だけど、いつも太郎と一緒にいて、太郎の兄のようで友達のようで本当かわいらしい。
ウルと太郎はこれから悠久ともいえる長い時を仲良く一緒に暮らしていくんだろうな。四季を愛で、自給自足の豊かでのんびりした生活をこの世界のどこかでしているんだろうと思うと心がぽっとあったかくなる。