BLを読み解きたい

なんでこんなに好きなのか考えたいだけ

雷神とリーマン 感想 ネタバレ

"でもそれが

命の決まりやねん"

 

 

 

泣けるBLということで紹介してもらった本作。

 

泣きたくはないんだけどそれほど人の心を揺さぶる物語はいったいどんなお話なんだろう。

 

 

 

 

たくさんの方々が絶賛するだけあって私もこのストーリーに最大の賛辞を送りたい。

 

 

 

 

雷遊の裏表のない言葉はあまりにストレートで何度か心がツンってなった。

失恋を引きずる大村さんに その男を愛した事を誇れ。と言う。

苦手な梅干しを食べた時、梅干しに怒る。私なんかここ凄く印象的やねんね。

私なら梅干しを渡してきた当人に怒りをぶつけてしまいそうになるけど雷遊は違う。ぴりぴり酸っぱい梅干しに怒るんだ。

 

 

 

大村さん、ゲイで雷遊の見た目にすごく惹かれる。いつも公平に物を考える。誠実に雷遊に接する。そして好意をちゃんと伝える。

 

大村さんと大村さんのお父さんのくだりがとても泣いちゃった。

大村さんは兄に引け目を感じ、家族と距離をおいていたけれども父は等しく息子をすごく愛してる。

2度目、死がすぐそこまで迫っていた時、雷遊が

 

"命ある限り一緒に生きていきます"

 

と強く誓い、

 

父が

"息子をよろしくお願いします"と雷遊の手を握り、それこそ神に祈るように吐き出すその今際の際をどうして涙を流さずに読めるんだろう。

ああこう書いてる今も泣いてしまう。

 

 

大村さんは物語の始めでは仕事に疲れ、恋人も諦め、日々の食事も適当やった。

そやけど物語の中盤でも環境は変わってないねんね。同じ会社で働いてる。ただ自分の努力でかなり働きやすくなってる。食事も雷遊と一緒に食すため努力したり素敵な惣菜屋さんを見つけたりしてる。

物事の捉え方はそうであると常々思ってるねん。

不幸だ大変だと嘆くのはええんやけど、別面から見る事、自分の意識をそう変えることは大事やと思うねんな。

 

毎日メイクをする時、恥ずかしい話やねんけど、よっしゃ今日もかわいい!って毎日思うの。自分のこと。痛いやろ。

前に友達とメイクを一緒にした時、

あーもーええわ。ってメイクを終えてて結構びっくりしてん。メイクなんて毎日するのにそういう風にメイクを終えるのはもったいないし、単純に良くない事やと思う。他人から見た自分じゃなく、自分を可愛く彩る為に毎日メイクをしてるのにな。

 

 

 

 

最終巻の5巻になり、大村さんは年老いる。

ただその老い方はなんという幸せに満ちた時間なんだろう!

2人で仕事をして、アプリを開発し、結婚して、大村さんが望んだ田舎で暮らし、日々を慈しみ、そうして大切な人に守られて、そっと人生を終える。なんてなんてなんていい人生なんだろう。

 

そして雷遊は1人になった。

 

あああああどうしてどうしてつらい!神さまならどうにかこうにか!

 

でもそれが命の決まりやねんな。

 

手塚治虫火の鳥、マキムラを思い出す。永遠の命はなんていう孤独なんだろう。

 

大村さんも友達も友達の子孫も惣菜屋さんもニトリの友達ももうみんなみんな誰もいない

 

2人きりの桜の前で、気の遠くなるような時間をじっと座る雷遊。

会いたい。でももう絶対会えない。

 

 

 

保険会社のね、サイトでね、一緒にいれる時間を算出してくれるの知ってる?

大切な人が居るならば是非やってみて欲しい。私は旦那と約2年やったの。

仕事したり、睡眠したりあるから向き合っている時間はあと約2年。その短さにびっくりするんだけど、あんまり実感がない。

だけどもこの御本を読んで強く思う。下らん意地を張らずに愛しさを伝えよう。好きだ、ありがとうを伝えようと。

(ありがとうとごめんなさいが言えない女と思われてる)

 

旦那に強く誓わせてることが2つあって、16歳から一貫して旦那に誓わせてるの。

1.どんなに突拍子のない事でも私が真剣に言うてたら丸ごと信じる事

2.絶対私より先に死なない事

 

先に死なれる辛さ、味わった事がないけれどきっとすごく辛いだろうから嫌なの。その辛さは旦那が背負って欲しい。葬式にはスクエアプッシャーを流して欲しいし遺影も決めてるから。

 

なんだかそんなことが馬鹿馬鹿しく思うほどの喪失があの桜のシーンにあった。

 

 

 

 

 

 

下世話な話をするならば

今作にセックスシーンはない。

 

けれどもきっと2人はセックスしただろう。

そう思うところは結婚指輪をしてたところに確信したのだけれど、2人はした。きっと。

その行為、その時間は幸せの最たるものやったと想像する。互いの温もりを交換して愛を伝え合う、交尾だけではないって雷遊が思うそんな濃密な瞬間も、人生の、地球の進化の、カケラやもん。