なぜ今なの?
つい先にたくさんの蝉法師の終わりを見たばかりの今なの?
多分おとといくらいにまだ蝉法師の念仏を聞いたんだ。全然遅いやん。全然全然遅いよって思ったばかりの今なの?
先生のTwitterで蝉法師の進捗を見ていたから今年の夏はいつもより蝉の声を注意深く聞いたし、蝉の抜け殻を見て、こんなみんなの見える所で羽化してるってぷんぷんしたり、バタバタしてる蝉の姿に胸がぎゅってなったりしてたのになおさら!
命がぎゅうぎゅうめいいっぱい詰まった御本やった。
幼い頃からこう思う。
蝉は何で地中から出ることにしたんやろう。
何年も地中で暮らしていたのにその生を全うするそのほんの数週間前に何故外に出るんだろう。外に出るのはどんなに怖いだろう。地中で繁殖したらいいのになぁ。
彼らの真夏の数週間、目の見えない熊蝉法師、誰より大きな油法師(泣かずにはいられない)、生物的に役目を果たせた明々法師、3者の命の輝きたるや凄まじい。
あぁそして地中で修行中の法師たちに脈々と繋がる夏の特大念仏がもう堪らない。
昆虫の世界って興味深いよね。浅くしか知らないし、私の興味はもっぱら蜂、蟻、蜘蛛(昆虫じゃないか)なんだ。社会性をもってたりする姿になんだか心惹かれるの。
蜂は百田尚樹の"風の中のマリア"がすごくよい小説。
蜘蛛は蜘蛛の巣を見るのが好きだから、大きくて立派な蜘蛛の巣をマークして家人を連れて見に行くくらい好き。私のネイルサロンの玄関の植木に蜘蛛の巣が出来た時もすごく嬉しくて、毎日話しかけてたら蜘蛛が蜘蛛の巣を揺らして返事してくれるの!(多分実際は話しかけたその声の振動を不快に思って揺らしてるんやろう)
お客さんにも、"この子ウチの蜘蛛ちゃんです"って言うてたけど、みんなネイルサロンの玄関に蜘蛛の巣張ってるとかないわって笑ってた。
風が強い日はなんだか蜘蛛の巣もよれよれしてまた蜘蛛が補修とかしてて愛おしかった。
でもね、夏が終わって秋になったら蜘蛛がいなくなっちゃった。そうしたらお客さんも"蜘蛛がいなくなっちゃったね"って寂しそうにしてて笑った。
私の今ある昆虫の御本はこんな感じでその中でも一等大好きな御本になった蝉法師。
私はあと何回夏を、蝉法師の念仏をきくことができるのか分からないけど、何十回目でも必ず思い出す。
今年の世代の蝉法師の念仏を聞く時、あの3者の念仏を必ず思い出す。
最終シーンのあのコマと共に。
短い命だと嘆くのはやめよう。
幾多の苦難と奇跡を乗り越えて太陽の下で天寿を全うした彼らを労うんだ。