BLを読み解きたい

なんでこんなに好きなのか考えたいだけ

紅椿 感想 ネタバレ

"ただ 「鬼」はいったいどちらなんだろう"

 

 

 

人のエゴイスティックなところをこれほどまでに眼前に押し付けて顔をぐりぐりとねぶる物語があるんだろうか。

 

 

赤子であったアカを山で拾った佐吉。

佐吉が山奥に追いやられている理由からして異人の父親と日本人の母親から産まれたことが推察される。

 

昔は異人の事を天狗や鬼に準えて恐れていた事を知った時、島国日本人の無知と無邪気さがかわいらしくさえ思ったけど、実際は排他的でムゴいよね。

 

アカは人の言葉が話せない。

話せないからといって理解してない訳ではなさそう。

 

 

 

私ね、よく猫を拾うの。

過激派動物愛護だと自称しているんだけど、果たして猫にとって一体何が幸せなのか。ってよく考えるの。

 

野良猫は病気や事故。寒さ暑さ空腹にも耐えなければならず、不憫だと一様に思ってたけど、そう考えるのは私のエゴなんじゃないだろうか。

 

野良猫の寿命って平均2年なんだって。

家猫なんて10年以上生きるのにね。

 

ただ好きに虫を追いかけ、恋をして、子孫を残し、ケンカしたり日向ぼっこしたり自由に生きた太くて短い2年と、

いつも家でぬくぬくして私に溺愛される15年、どちらが幸せなのか本気で分からなくなったの。

 

だから親猫もいない、ここで今私が救わなければ数時間で死んでしまうような子猫のみ助けることにしたの。

そうして出来るだけたくさんの子猫を救える(救うというのも勝手なエゴなんだけど)ために、かわいい子猫は引き取り手を探す。どうしようもない子猫だけ私が最後まで面倒みることに決めたのね。

 

だから、ビニール袋にまとめて捨てられてた兄弟子猫も幸せに暮らしてるし、うちの家には誰も引き取り手がいないと私が判断した盲目のネコがいるんだ。

 

 

 

佐吉は迷う。

 

「人」らしくなれるようアカを育てること。

ご飯の食べ方を注意する。

自然に淘汰されようとした命を救ったこと。

自分とは食べるものが違うこと。

 

アカは鬼であって人ではないのに、人にさせようとする自分は傲慢なんじゃないだろうか。

外見が違うというだけで里の人に除け者にされた自分のやり場のない恨み。

 

アカを外に出す時のグロテスクな覆い。

 

アカの真っ直ぐ自分を見る大きな目。

 

この全てが何故か私、涙が止まらなくって。

泣いて泣いて、何が悲しくて泣いてるのか分かんない。

 

佐吉のエゴとエゴイスティックな自分と葛藤している佐吉が、自分のエゴを抉られるような感覚なんやろうか。

 

 

 

さて、そして、佐吉はアカをアカの世界に帰すのね。

 

そうして、アカと再会した時のアカのなんとまあ美しいことやろか。

 

人であろうが鬼であろうが女だろうが男だろうが、なにもない。その全てを凌駕する生き物としての圧倒的な美しさを持って佐吉の前に現れる。

本当に美しいので是非見てみてほしい。

 

誰でも盲目的に魅入られるだろうね。あんなに美しければ。

 

私はここの箇所にはこのBGMが本当にぴったりだと思うからまた貼り付けるね。

 

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掻き立てられるような美しいピアノの旋律が、奥深い山へ通い詰める佐吉の恋慕にぴったりに思うの。

 

 

 

 

冬の到来を期に指切りをしなかったアカ。

 

 

 

 

アカが言葉を話すくだりになってね、

私、あ!なに?蛇足!ってつい思っちゃったの。

アカは最後まで話さなければよかった、って咄嗟に慌てたんだけど、違うのよ私。

私はいつも間違ってるんやよ。

 

アカによって気の遠くなる寿命を持った佐吉。

鬼でもない、人でもない。アカの真っ直ぐな愛だけに生かされているんだからアカと意思疎通が出来ることができるんだから。

 

 

現在今に至るまでまだ2人一緒に生きてる。

なんて2人ぽっちの美しい物語やったんやろうか。

 

 

 

 

 

後書きまで読むと、先生は「やさしい紅椿」ってタイトルにされようとしたんだって。

 

 

 

まーた自分語りなんだけどね、私の大切な盲目のねこ。

私が寝る前にトイレに行ってね、私知らずにトイレに閉じ込めちゃったの。

 

朝起きてトイレに行った時、猫がいてね。

私に、ゴロゴロふみゃふみゃ全力で甘えてるんやよね。

 

信じられないよね。

その夜はちょっと寒くて、どんなに1人で寂しくて不安で寒かったんやろう。

自分がその立場なら一晩中どうやって殺したろかって思い巡らしてるところ。

ドアが空いた瞬間に怒り狂うと思うのよ。

 

違うの。猫。

ただただ会えて嬉しいの。私より知性があって賢くてとびきり優しいの。