一体何が罪なのか
いやぁ、こちらの御本は本当に私好み。
「一体何が罪なのか」
柾が鞭打たれてる最中に北条は思う。
あのー、恋に恋してヒロインぶってるのやめてくれる?あなたの心の傷なんかより、今まさにバックルついたほうで鞭打たれてる柾の方が地獄の苦しみを味わってるからね。
「ただどこまでも青い
この恋だ」
と北条は回想するのだけれど、ほんとーーにただただ青い。
ARUKU先生の御本の他の攻めは、性格、方法は難あれど愛した人を全身全霊でなりふり構わず愛してた。
でも北条は違う。
好きだ好きだと溺愛していながら、
誰にも知られたくない。柾のために知られたくないんじゃない、己のために2人きりだけの時だけ愛してる。
心の底から柾を愛してるのはちゃんと伝わるんだけどずるいんだ。そのズルさがとっても人間らしいところがいいんだけど。
まだ17歳で、カトリックの厳しい全寮制で、自分の立ち位置と、甘ったれた育ち方とすべてを総合してもダメだよ。やっぱり。
人は絶対暴力を振るわないといけない時があると思う。
なりふり構わず暴力によってのみ解決する事柄があると思う。
北条はその機会を2度も逃げた。
子猫が死んだ時。
先生を殴ってその頭を水の中に沈めて子猫を救うべきだった。
土下座なんて逃げ腰の弱虫に小さい命が救えるの?
このシーンで、北条の弱さが際立つ。
救えた子猫の命だけど、救えなかった。
柾に嘘をついた。
子猫を救おうと土下座したことが何故か英雄視された。
本当に大切なものを守る時自分を犠牲にできない人はやっぱり信用できない。
そして、柾とキスをしたのがバレて会長に柾が鞭打たれる時。
私はカトリックじゃないからよく知らんけど自己犠牲の精神そのものの柾。
できません…やめてください…とボソボソ言うてる北条。
今すぐ会長からベルトを奪って皆んなを殴って殴って柾を救わないといけない。そうしないと絶対いけないところで、力無くぼーっと木偶の方如く突っ立ってなんてみっともない。
自分がホモだ!と叫んだ時も学校の知り合いのいないところ、この期に及んでもなお、柾の傷を心配するのも2人っきりの時。
柾は、須藤に母親が侮辱されたとき消化器で須藤を殴ってた。
絶対に暴力が必要な時はある。
そして、後から会長を殴ったって、会長の言う通り遅いんだな。
せめて、自分は柾を愛してるから柾を殴った倍の鞭をくれ!くらいの気概は欲しいところ。
柾をキリストのように鞭打ちされた血まみれの背中にした罪は、いくら後から後悔しても愛してると泣いても100年経っても消えないと思うな。
だから、どんなに孤独に生きて柾を探して何年も経ってようやく柾に会えてまた恋した。なんて、えらい呑気で勝手な事よ。ってちと呆れた。
そんなことも全部含めて、柾は小さな宝物箱に入れたのかしら。
キラキラ光る恋物語だけ切り取って入れたのかもしれないな。
夏目漱石のこころに準えた 神父とKとの恋のラブレターは実直でいいな。
「神の目が届かないところまで逃げてやる」は素敵。
10代の恋って拙くて懸命で愚かなこともたくさんしちゃうけど、誰にとっても宝物だよね。