BLを読み解きたい

なんでこんなに好きなのか考えたいだけ

九尾狐の花嫁 感想 ネタバレ

ここの芙蓉は一日限りの儚い美花ではなく

久遠に咲き誇る美花だと言っておった

悠久の時を生き続ける美しいお主と

よく似ていると思ったのだ

 

 

一言の無駄もなく歌うように流れるセリフが美しい

 

美童で占地先生の作品に夢中になってこちらの新刊も指折り数えて心待ちにしてた。

 

 

まず、私は中華の世界観が大好きなんです。

だからもうそれだけでハマっちゃう。

映画ラストエンペラーも何回観たか分からないし、紫禁城に本当に行った時は大層興奮した。

(「この壁、溥儀が自転車乗ってた場所じゃない?」って興奮して走り回ってたけど余りに広いから、途中疲れてきてあんまりにも同じような赤壁が続くから「もうここが溥儀の自転車の場所でええわ。もう疲れたわ」って泣き言いうてた)

 

羅仙が、皇帝の住んでいる場所に連れて行ってもらった時、空から景色を眺めていたのが憧れの紫禁城を高いとこから見た興奮を思い出させた。

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また感想から脱線してもた。

 

 

先生の描く絵がとにかく私は好きなんだな。と再認識した。

先生の描く羅仙の豊かな表情

美しく贅沢な背景

九尾狐の尾の豊潤さ

セックスの時の生々しくないようで生々しい色っぽさ。

全てのページが福々しい。

 

羅仙は九尾の生贄になるんだけどそれは死を意味してて通常ならどんなに悲壮感が溢れ出してしまうだろうね。羅仙の生い立ちも相まって余計にピリついた悲壮感に繋がりそうなんだけど、羅仙は違うの。

 

もちろん死ぬことは嫌だし充分焦ってはいるんだけど生来の素直で明るく自分の身に降りかかる災難に慣れているのか悲壮感が全くない。

あわあわしてるんだけどどうしたらいいんだろうって前向きともまた違う、うーん、、、ツタ植物がくるくると美しい螺旋を描いて次の拠り所を探すような真っ直ぐでキラキラ明るいんだなぁ。

そして本当にかわいらしい。

 

芙蓉は食料かつ性欲処理として羅仙を捉えていたけども羅仙のその眩しい真っ直ぐさと美しさに惹かれていくって感じかな?

芙蓉もずっと孤独の中にあるし、お互い孤独の道を通ってきたけれども理解できる共通点ではないやん?

 

だから2人は自分の世界はどこまでもお互いどこまでも不可解で、でも分からない事を受け入れて着実に愛しあっていく様が

お互いの名を呼び合い、愛してると伝え、数ページに及びほとんどそれしかセリフがないのだけれど、

名を呼ぶたび、愛を口にするたびに、こちらの心臓もどくんって熱くなっちゃうの。

ドキドキドキドキドキドキしちゃって、もう溶けちゃいそう。

 

 

先生の描くライン1本まで美しく色っぽく、わたしもジャンルは全く違えど毎日絵を描く仕事をしている身としてはどんな練習をしたのならあれほどの絵を描けるようになるんだろうと余りの遠さに少ししょんぼりするほど。自分と比べてもないし烏滸がましすぎるんだけど。その圧倒的さに羨望してしまう。と、同時にこうして享受できることを幸せだなってワクワクしちゃう。

 

 

 

 

 

芙蓉はお墓に枯れることのない美しい芙蓉の花を供えて、今までの数日の閨事も一つの大事な事として取り扱っていたということがなんかいいよね。

 

他者との違いをそのまま受け入れ、そして丸ごと愛すってお互いが出来るってものすごい深い愛だと思うな。